患者さん向けのやさしい医療情報








 無罪判決、まずはよかったですね!おめでとうごさいます。

 しかし、本来逮捕・起訴されるはずがない偶発事件(医療事故??)です。きわめて稀な、死亡率が高い癒着胎盤という病気そのものによる≪病死≫です。全力を尽くして万全の治療に当たったが、結果的に救えなかっただけです。殺人や傷害に当たるはずがありません。
            福島県立病院:産科医逮捕・起訴 死亡事故が思わぬ波紋

 それを一年も経過した時点で(奥さんは臨月だったそうです。自分の妻の出産さえも加藤医師は取り上げることが出来なかったのです。)、マスコミにリークし、公衆の面前で見せしめとして、手錠をかけて逮捕しました。長期にわたって拘留し、犯罪人として呼び捨て、医師のプライドも人権も無視した苛酷な取り調べだったそうです。肉体的精神的に追い込んで、検察側に有利な自白調書を強要したのです。
 公権力を乱用した検察・警察の横暴はひどすぎます。大野医師はその後診療も出来ず、心身はもちろん経済的にもズタズタでしょう。名誉毀損で慰謝料を込めて1〜2億円程度の賠償を福島県と国家、患者家族へ要求してしかるべきでしょうし、当然するべきです。

 誠心誠意、医療を行っても、結果が悪ければ、犯罪者として手錠をかけられ逮捕される。日本全国のすべての医師が震撼し、診療することに萎縮しました。患者を疑ってかかり、自己防衛的医療に陥りました。危険な産科や外科・整形外科などの外科系診療科、モンスター患者が多い小児科や救急医療は急速に破綻しました。

 同時期におこった奈良の妊婦たらい回し死亡事件(分娩中意識不明の女性、18病院受け入れ拒否、死亡)の一方的な報道もひどいモノでした。
小泉改革の経済財政諮問会議主導の≪弱者切りすて政策≫の結果、医療費は毎年2000億円圧縮されて、医療破壊が進んできたところでした。すでに産科医療供給体制は破綻しており、どこの医療機関も受け入れそのものが不可能だったのです。
これらの事件が医療崩壊にさらに拍車をかけました。
 治療費を払わない可能性が高く、危険率も高い、モンスター妊婦飛び込み出産を多くの医療機関が拒否するのも当然です。

 明治・大正・昭和(戦前)まで、出産はきわめて危険な、神頼みの命をかけた一大仕事でした。母子ともに死亡率も高く、国民すべてが出産の危険性について認知していました。
 昨今は、出産は安全なモノと誤解されています。自然分娩を礼賛したり、産科医を敵視し非難するカルト集団もいます。助産師団体の権利拡大や利権がらみの動きもあります。
              産科医療の崩壊と助産師制度、≪最近の通達≫


 新聞やTVなどの報道も、患者側の一方的・感情的な言い分のみです。 医療側の言い分は無視され、事実関係は一切報道されません。
 無罪判決後もそうでした。公的報道機関であるはずのNHKにしてさえ、感情論に偏った、患者家族の側にたった一方的な報道です。ひどいモノです。 国民の意識レベルがこれでは、医療提供側はたまりません。医療崩壊は決して止められないでしょう。国民すべてモンスター患者化しているのでしょうか??




 それにしても、逮捕の口実となった福島県事故調査委員会の報告書ねつ造もひどいですねえ!! 現場の医師をトカゲのシッポのように切り捨て、早く示談にしようとしたのです。主治医は落ち度がないのに、医療事故保険金をもらうために、落ち度があるようにねつ造したのだそうです。福島県は加藤医師に罪を着せたうえに、懲戒処分を科しました。
 まるで保険金詐欺です。加藤医師は県に対して名誉毀損で訴訟するべきです。
 どんなことがあっても医師を守りぬき支持するべきが病院のとるべき道のはずですが、ひとたび医療事故が起これば、現場医師一人の責任に押しかぶせ、容赦なく背後から銃を撃つのですね。血縁・地縁・職場から圧力をかけ、地方有力者・政治家まで絡んで、担当医師の立場を無視して、勝手に示談して、責任逃れに汲々としています。マスコミがさらに拍車をかけます。事実をねじ曲げ、事件をねつ造してまで医者叩きをして視聴率をかせぐのです。
 無責任な上級役人や病院管理者、いかに公立病院で勤務することが危険なことかを白日の下にさらした事件でもあります。≪医療崩壊の聖地≫と揶揄される福島県・奈良県はもちろんのこと、全国規模で国公立病院から医師の逃散を加速させました。

 医師を守れないような都道府県から
 背後から銃弾を撃ち込むような病院から
 モンスター患者が跋扈するような地域や職場から
 医師が立ち去るのは必然です。
 我々医師は奴隷ではありません。大切な家族もいます。








 はからずも検察は、中立的な立場ではなく、感情的・扇情的なマスコミや、モンスター化した患者側にたった視点から立件したと自白しました。恐ろしいことです。

≪追加記事≫の要旨 
 無罪判決が出たことを受けて、翌21日、吉村博人・警察庁長官が、今後の医療事故の捜査に慎重姿勢を打ち出すなどの発言があり反響が広がりました。≪事実上の終息宣言≫とも受けとれます。
 あえて恥の上塗りをするような、検察が上級審へ控訴するような愚挙にはでないのではないでしょうか
??

 元長崎地検次席検事の郷原信郎・桐蔭横浜大法科大学院教授(経済刑法)は
「いつでも身柄を取れるというのは捜査機関の独善的な考え方。医師は患者を抱えており、明白な過失がないなら身柄を拘束すべきでない。今回のケースは捜査機関の介入自体に無理があったのではないかと指摘した。







 患者家族も検察やマスコミに振り回されて、被害者意識にとりつかれたのでしょうか? 一面では、検察やマスコミこそが加害者であり、医師も患者家族も被害者かもしれません。
 しかし、妊婦の家族(とくに父親)の言動は理解できません。娘の命を奪ったのは加藤医師と思い込んでいます。「納得できる説明がなされなかった」と言い続けています。墓前で、加藤医師に土下座をしいたそうです。

 術前詳しく説明されていたのに、一方的に自分たちの要求を押しつけるばかりで、医師の忠告は一切聞き入れなかったようです。公判中審理が尽くされているのに、なぜ納得がいかないのでしょうか?
自分にとって都合がよい説明(医師が罪を認めること)以外はいくら聴いても、拒否して受け入れられないのでしょう。
 医師に罪がないのに罪を認めようがありません。

 しかも、娘(産婦)の命を奪ったのは前置胎盤に合併した≪癒着胎盤という難病≫です。加藤医師に何一つ落ち度がないばかりか、赤ちゃんの命を救ってくれた恩人のはずです。
 なぜ? 「ありがとうございました」と感謝のひとことが言えないのでしょうか?

 医師を憎み続けることで、娘を失った悲しみを昇華しているのでしょう?

 
 判決後、様々な状況がわかってきました。(しかし、確認できたわけではありません。)
 死亡した妊婦さんは、前回の出産も前置胎盤で帝王切開だったようです。「次回の妊娠出産は危険だから出産はあきらめなさい」と忠告されていたそうです。事実、その前回出産した医院や他の多くの医院で断られ、大学病院受診を薦められたようです。
 県立大野病院でも、加藤医師も危険だからと大学病院受診を薦めたようです。
 大学病院は遠いから、と大野病院での出産を強引に希望し、加藤医師の「危険も大きく、場合によったら子宮摘出も考える」との説明にも「第三子も欲しいので」と子宮温存を強く本人や家族が希望したそうです。
 (この通りなら、出産の危険についても十二分に説明がなされていますね。)
 出産当日、帝王切開で無事胎児娩出後、胎盤剥離を始めて、そこで癒着胎盤にはじめて気づいたわけです。
 
   
産婦も加藤医師もじつに運が悪かった。
  地雷を踏んでしまった。



 患者・家族の強い要請に応じてしまった。加藤先生は、優しい(気が弱い?)人情に厚い医師なのでしょうね。赤ひげよろし、義務感・正義感に強い医師が陥りやすい罠にはまってしまった。
 (私がその立場にいたら、きっと保身上、責任回避して断ったでしょう。研修医時代、アメリカの医療訴訟を例にして、まず自分自身を守ること。患者や家族の言うことは決して信じてはいけない。法曹関係者とマスコミ関係者は特に注意するべきこと等々、
身の保身についても厳しく教え込まれました。
 仮に、妊婦が忠告通り、大学病院で出産したとしても、特別高次な治療ができるわけではありません。同じ結果だったかもしれません。しかし、患者家族はあきらめ納得された可能性は高いのでないでしょうか? 少なくとも責任の分散はできました。
 
一人医長であり責任の分散ができなかった。その点でも運が悪かった。善良であるが故に罠にはまってしまった。そういう意味では脇が甘かった。
 
 この事件が契機となって、「一人医長では危険な出産などをとりあげられるはずかない」と認識され、多くの病院から産科が消滅しました。

   
妊娠・出産は本来危険性が高いモノ、
  何が起こるかわからない賭けです。





 もう一度くり返しますが

 医師を守れないような都道府県から
 背後から銃弾を撃ち込むような病院から
 モンスター患者が跋扈するような地域や職場から
 医師が立ち去るのは必然です。
 我々医師は奴隷ではありません。大切な家族もいます。





大野病院事件、検察が控訴断念 産科医の無罪確定へ

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 福島県大熊町の県立大野病院で2004年、帝王切開で出産した女性=当時(29)=が手術中に死亡した事件で、業務上過失致死などの罪に問われた産婦人科医加藤克彦医師(40)を無罪とした福島地裁判決について、福島地検は29日、控訴断念を決めた。無罪が確定する。

 医療行為をめぐって医師が逮捕、起訴され、医療界の猛反発を招いた異例の事件は1審で終結することになった。

 福島地検の村上満男次席検事は「裁判所の判断を覆すのは困難と判断した」と説明。地検は、主張の根拠となる臨床例の提示や、新たな鑑定人確保などは難しいとの結論に達したとみられる。

 公判では、子宮に癒着した胎盤をはがし続けた判断が妥当だったかどうかが最大の争点になり、20日の判決は「標準的な措置だった」と過失を否定した。

 「直ちに子宮を摘出すべきだった」とした検察側主張に対し、判決は「根拠となる臨床症例を何ら示していない」と退け、立証が不十分と指摘。死亡を警察に届けなかったとされた医師法違反罪も含めて無罪(求刑禁固1年、罰金10万円)を言い渡した。

※写真=大野病院事件で福島地検が控訴断念を決め、記者会見する保岡法相=29日午後、法務省
(共同通信社)





産科医療現場の窮状・悲惨さ

    福島県立大野病院:加藤産科医師逮捕・起訴 死亡事故が思わぬ波紋
        大野病院、加藤医師、無罪:その評価・波紋と医療崩壊への影響 (2008.8,20.)
    分娩中意識不明の女性、18病院受け入れ拒否、死亡 
(2006,10,17 岐阜新聞)
    島でお産ができなくなる。隠岐、産婦人科医ゼロへ
    産科医療の崩壊と助産師制度、≪最近の通達≫
    救急飛び込み出産のハイリスク、非常識、費用不払いが高率、
(2007,10,14岐阜新聞)
    産科医療現場の過酷さ、悲惨さ 
2007,10,06岐阜新聞
    飛び込み出産のリスク、費用の踏み倒し、赤ちゃん置き去り(2007,8,31新聞紙上に拾う)
    
モンスター患者・医師の専門性の軽視・治療の規格化 (2008,8,23,岐阜新聞)
    
周産期医療の窮状、モンスター患者、モンスター家族 (2008.9.1.岐阜新聞)
    産科救急医療、首都東京でさえ壊滅状態 (2008.10,22.岐阜新聞)
        周産期センターの崩壊、いったい誰が悪い


医療の崩壊、破壊、労働地獄
    医療の危機的状況
        ≪人頭払い≫と≪かかりつけ医≫   
        
開業医へ救急医療を押しつけ
        救急医療の回避、よきサマリア人の法律
        
産科医療の崩壊と助産師制度、≪最近の通達≫
        
インターネット(電子媒体)での診療報酬請求を強制
        院内調剤の破綻、医療経営の深刻化
        病診連携は絵に描いた餅
        医師の不足と偏在、地方の医師不足
        大学医局制度の崩壊と地域医療医師供給システムの崩壊
        小児医療無料化政策と小児医療現場の地獄絵図
        全国規模で医師の逃散現象  月刊保団連2006,6より
        医療費総枠拡大のための財源は?
    日本の医療費は本当に高いの?
    日本の医療が崩壊する(三重県医師会)
    医療崩壊をくいとめよ、年金問題より医師確保を

    
モンスター患者・医師の専門性の軽視・治療の規格化 (2008,8,23,岐阜新聞)



     
       
2006.10.12




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