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卒後臨床医学教育の大改革と
それが及ぼした影響とは?



 日本でも、わりと最近、東京医科歯科大学を基幹校にして、まずCBT,OSCE導入など、アメリカ式の臨床現場に即応した実践的医学教育を取り入れた卒前教育改革がなされました。

 また、
卒後教育改革として、アメリカ方式の複数主要診療科をローテートするスーパーローテート卒後研修制度が導入されました。これは、臨床医である以上、眼科や皮膚科などのマイナー科であっても、救急救命処置や一般臨床医の基礎を先ず体験習得させるべきだ、という主旨の、従来の偏狭な専門領域に片寄ったストレート卒後臨床研修方式への苦い反省の上に立った改革です。
 たまたま医学部、歯学部の、私の同級生であった教授たちグループが、前医学部長のもと、その改革の中心となって奮闘し、数多の困難を乗り越え、実現にこぎつけたようです。しかし、教えるスタッフ側の経験不足、人材不足、診療・教育体制整備の遅れなど、まだまだ不完全なことは否定できません。


              ****************** 私見 ********************

 初期研修2年間は特に重要です。あくまで臨床各科の基礎となる主要診療科(麻酔科含む)、救急救命、集中治療室などをローテートさせ、プライマリー・ケアとエマージェンシー・ケアを確実に修得させるべきでしょう。他は要らないと言い切ったら言い過ぎでしょうか?
 この新しい卒後臨床教育システムがうまく機能するかどうかは、まさにここにありましょう。
 単なる多数診療科見学ローテートに終始するなら、大事な時期をムダに過ごすだけです。研修医にも研修病院にも何一つ利益はありません。
 大学病院を含め、整った研修システムを構築できた病院だけが生き残り、旧態然とした病院は淘汰されていくでしょう。導入当初はいざ知らず、有名ブランドや好立地条件にあぐらをかいて、コ・メディカルがやるべき雑務に追われるようなところ、改革が遅れるところは、いずれ研修医や若手医師から見放されていくでしょう。

 メイヨークリニックマサチューセッツ総合病院などが代表するアメリカの有力病院のように、他大学、他病院に先駆けて、ピラミッド型診療・研修システムを構築・充実させること、その底辺を支える戦力として学部学生も有効に活用すること、合理的な研修カリキュラム、安全で能率的な教育プログラムを確立させ、医局雑用をなくして研修医の信頼を勝ち得ること、教わるだけでなく研修医どうしで常に互いに教えあいチェックし合い、学部学生の教育にも参加させるシステムを作ることが重要です。すなわち米国臨床医学訓練の神髄である『教えることはより深く学ぶこと』を実践させること、またスタッフも研修医も学生もお互いに常に評価しあうシステムの構築が必要です。その結果として、教育病院としての社会的評価を飛躍的に高めることこそ喫緊の大事でしょう。勿論そのためにはパラメディカル部門もあわせ、組織全体を大改革しなくてはなりません。避けては通れません。

 卒前医歯学教育・研究部門と卒後医歯学教育・大学病院部門とは切り離して、お互いに補完させて、より適性にスタッフを配置させるべきかもしれません。研究も一流・臨床もまた一流とまでもを一個人に要求するような時代では最早ないのではないでしょうか? 大学にとって、臨床の超一流、または研究の超一流のほうがより有用なことは自明の理でしょう! 臨床、教育、研究、運営etc.各々別々に担当する多数教授制です。
 
実力競争、自然淘汰がおのずと働き、優秀な人材が自然と集まり、スタッフとして残っていくようにならなくてなりません。そのためには臨床能力、指導能力、経営貢献度に応じて正当に評価し、報酬に差をつけること。また、病院の広告塔も兼ねるスーパードクターを高給を払ってでも確保し利用して、日本中・世界中から患者を集め、高収益な自費医療・高度医療・特殊医療を提供し、病院経営の安定をはかること、結果として世界的評価を獲得するべきでしょう。医療費削減ももはや限界にちかい最悪の状況下において、きびしい大学間・病院間の生き残り戦争が開始されたのです。

メイヨークリニックのホームページへ
マサチューセッツ総合病院のホームページへ   


   写真借用:メイヨークリニック

  
   マサチューセッツ総合病院(写真の借用サイト)



 
 
改革が及ぼした影響?

 
9時ー5時、公務員並の研修時間?消極的な研修態度、
(研修医はスタッフとは違います、鉄は熱いうちに打てとも言います) 自分の医局後輩になるでもない、そんな研修医たちにまともに指導などできない。2年後、入局者がいるのかいないのか不明のままに、(研修医以下の薄給で)医局雑用を延々とやらされるのは、それ以上に耐えられないと、大学医局から若手医師たちがまず逃げ出しました。

それを引き金にしたかのように、急激な変化が起こりました。
 ●研修医や若手医師の東京など
大都市への集中と偏在、逆に地方の医師不足  
 ●大学医局制度の崩壊とそれに頼っていた地方医療供給システムの崩壊
 ●司法・マスコミ、正義の仮面をかむったエセ市民団体などの
無責任な医者たたき
 ●医療訴訟の頻発による
救急医療の回避、自己防衛医療への傾倒、リスクが大きい医療からの逃散

それとは別に、小泉改革の
弱者切りすて、カネが全ての殺伐たる政策が、医療崩壊へ拍車をかけたことはまちがいありません。
 ●診療報酬の度重なる医療費削減政策、消費税の負担増加による医療経営の深刻化
 ●医療経済上最大のムダであり、医療従事者や患者家族の経済的・精神的負担も甚大な、
  
終末期医療・延命医療に対する議論の先延ばし、そして終末医療現場でのとまどいや混乱。
 ●一部患者のわがまま放題・勝手都合での救急受診や診療費不払いの頻発   
 ●
医療の単なるサービス業への凋落お気軽コンビニ消費、100円ショップ消費と同様な
  激安お気軽受診。消費者は神様よろしく、診てもらって当然といった感謝の念の欠如。
  それら
患者モラルの低下に応じて、医療従事者側のモチベーションが急激に低下して
  きました。働きがいもなく、聖職者的職業倫理観だけでは穴埋め不可能です。

これらの諸要因があいまって、
危険で待遇の悪い国公立病院から
、全国的な規模で、医師の≪逃散≫(辞職立ち去り型サボタージュとも言われる)雪崩現象が誘発されました。
また小児科・産科・外科系診療科など
リスクの大きい診療科への新規希望者が激減し、現役専門医の他診療科への転科や仕事そのものからのリタイア現象なども起こっています。
堰が切られたかのように、これら
深刻な諸問題が噴出してきました。


        
     ****************** 結語 *******************

 
医療供給体制の危機的状況をまねいているのですが、政府もマスコミも医師を非難するばかりです。医療崩壊を加速させるようなハゲタカ経済界(政商)・経済諮問会議が主導する医療費削減政策を変えようとはしません。医療供給体制の根本的な問題点は依然無視され続けています。

 そのすべての元凶は、
年々削減される総医療費枠の縮小なのです。ここが解決されない限り、どんな小手先の策を講じても、効果あろうはずがありません。
自民党政府が策定した医療費削減政策を速やかに中止し、現在の医療水準に則した新医師配置基準と必要医療費枠を策定し、総医療費を増やさないことには何一つ解決しません。財源は十分あるのです。

            
******************* 見通 *******************

 一度踏み出した卒後臨床教育改革の流れは変わらないでしょう。
病院淘汰、病床数の削減、医大や大学病院の淘汰や再編、など将来を見通した国家としての改革基本方針の一つでもあるのでしょうから。




             ***************** あとがき ******************

 以上、部外者の勝手気まま、感じたままの戯言(感想)です。大学から飛び出して、5年ごとの医学部歯学部合同同窓会での再会を楽しみにして、日々の診療に平々凡々と従事している程度の、しがない一町医者にすぎません。大学の実情や内情までは皆目わかりません。

 同窓会報や大学広報誌、各種臨床雑誌などで、母校・医科歯科大学がハーバード大学と緊密に連携して、卒前教育改革や卒後教育改革の実をあげ、全国の大学をリードして、医学・歯学の卒前卒後教育改革をおしすくめている様子を耳にするにつけ、OBの一人として誇りに思います。また同時に、日本の臨床医学・歯学教育改革の更なるスピードアップと着実な発展を期待しています。
 さらにOBとして母校に期待することは、現状の一橋大東工大 東京外大との4大学連合をより強固なものにし、小異をすて大同につけて、可及的すみやかに統合をめざし、強力な総合大学、大学院大学になってもらいたいことです。
       
        2006.3.23

   ハーバード・メディカル・スクール                           写真借用:亀田能成先生HPの<ボストン絵日記>より



 従前の卒後臨床医学教育とは? その問題点は?   
 アメリカの実践的臨床教育を取り入れた卒前教育改革



    
     00,8 日々草


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