医師不足 負の連鎖

研修医戻らず、細る地方大学病院



 義務化された臨床研修を終えた1期生が今月から、それぞれの進路に進んだが、大学離れの傾向がくっきりと表れた。大学病院の診療体制が先細りするうえに、大学からの医師派遣に支えられる地域医療にも大きな影響を与えそうだ。既に、医師不足で休診など診療を制限する病院も現れている。
                                      (医療情報部 坂上博、田村良彦)


待遇いいと一般病院へ


   指導医から画像の見方などを教えてもらう研修医(左)=弘前大病院で


 「せっかく育てた医師の大学外流出が、これほどひどい状況になるとは思わなかった」

 弘前大卒後臨床研修運営委員会の水沼英樹委員長(産婦人科教授)は、危機感を募らせる。同大医学部は1学年100人だが、2年間の臨床研修終了後、専門医研修の場に同大を選んだのはわずか19人となった。

 水沼教授は「青森県出身者は入学者の2、3割で、大学に残る医師は従来40人ほどだったが、新研修制度の導入で、大都市の一般病院に流れる医師が増え、流出に拍車がかかった」と話す。

 読売新聞が全国80大学に対して行ったアンケート調査も、地方大学が従来の半数ほどしか確保できそうにない厳しい現状を浮き彫りにした。

 新研修制度の導入以前は、新人医師の7割が大学に残り、専門に進んだ。ところが新制度では、臨床研修先として半数が一般病院を選び、そのまま一般病院で専門研修に進んだ医師が多い。

 厚生労働省が昨年3月、行った調査では、臨床研修で一般病院を選んだ理由として、「症例が多い」(40%)、「研修プログラムが充実」(32%)を挙げる医師が多かった。

 千葉県内の一般病院で、臨床研修に引き続き、専門医研修を始めた男性医師(26)は、「大学に比べて医師数が少ないので、たくさんの治療経験を積めるし、病棟長など責任ある仕事もやらせてもらえる可能性もある。腕を磨くには、一般病院の方が良い」と話す。


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 大学病院は、教育機関でありながら、専門医を育成するための研修プログラムを整備していないところも多く、医師の臨床能力を育てる努力を怠っていた面がある。

 また、研修医には、先輩医師の学会準備など雑用が任され、給料など待遇面でも一般病院に劣っていた。一般病院との競争が始まり、「大学」という看板だけでは医師を集めることが難しくなってきた。


「地元枠」で若い力確保

 こうした変化に対して、大学側も、若い医師を引き寄せるための工夫を始めている。読売新聞のアンケートに対し、「多様な患者の診療機会を与えるため、大学、地域の病院を巡回して研修を積むプログラムを作った」(東北大、旭川医大など)、「大学院生にも給与を支給」(札幌医大、東京女子医大)などの改善策を打ち出している。

 弘前大や秋田大など7大学は今年度の入学生に、それぞれ県内の高校出身者を優遇する推薦入試の「地元枠」を設けた。

 山形県は昨年度、特に医師が足りない小児科、産科、麻酔科、放射線科を目指す医学生を対象に奨学金制度を導入。奨学金をもらった年数に応じて、県内での勤務を義務づけた。大学と自治体が手を携えて医師確保に全力を挙げている。





臨床研修
 2004年度に36年ぶりに制度が改正され、医師免許取得後2年間の研修が義務化された。医師としての人格育成や初期診療能力の習得などが目的。終了後に、専門医研修などに進む。

派遣先から引き揚げ

相次ぐ休診、病棟閉鎖も

 大学病院が医師不足から、関連病院に派遣している医師を引き揚げており、地域医療が影響を受けている。

 愛知県の東部、人口5万人余りの新城(しんしろ)市民病院(271床)。歯科を除く11診療科で27人いる医師のうち、4大学から派遣を受けていた5科10人が先月末で退職したが、後任の派遣はない。外科だけは別の大学から4人を確保したが、その他は見通しが立たない。

 このため今月から、医師が半減する内科が初診外来を中止。また、小児科は外来のみになり、医師不在になる産婦人科は休診となった。

 千葉県内の7市町村が運営する国保成東病院でも、内科医7人が先月で退職したが、千葉大からの補充はなく、今月から内科病棟のほぼ半数が閉鎖した。

 栃木県真岡市の芳賀赤十字病院では昨年、独協医大が医師を引き揚げるなどして内科医が11人減って2人になり、一時、入院患者を30人までに制限した。

2006年4月16日  読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20060417ik0a.htm


医師臨床研修マッチング

研修医数 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度(マッチ数)
臨床研修病院 2,237 3,262 3,824 4,184
大学病院 5,923 4,130 3,702 3,916
合計 8,160 7,392 7,526 8,100
 
 2007年度大学病院マッチング結果
 2007年度マッチング情報厚労省提供    
 2008年度マッチングと疑問点?




マッチング率の低い大学病院
自分の大学出身者からも不人気な様子がうかがわれます。地方大学の劣勢が顕著です。

名称 マッチ率 募集 マッチ数 自大学出身
日本医科大学多摩永山病院 12.5% 8 1 1
東北大学医学部附属病院 15.0% 40 6 3
三重大学医学部附属病院 15.0% 20 3 3
弘前大学医学部附属病院 19.1% 47 9 6
奈良県立医科大学附属病院 25.4% 67 17 12
秋田大学医学部附属病院 26.0% 50 13 11
徳島大学病院 26.1% 92 24 13
香川大学医学部附属病院 26.2% 42 11 9
旭川医科大学医学部附属病院     28.6% 56 16 15
東京医科大学霞ヶ浦病院 33.3% 12 4 4
高知大学医学部附属病院 35.1% 37 13 12
岐阜大学医学部附属病院 35.2% 54 19 10
新潟大学医歯学総合病院 35.5% 93 33 14
福島県立医科大学附属病院 35.7% 70 25 19
岩手医科大学附属病院 36.7% 30 11 10
岡山大学医学部附属病院 40.6% 32 13 9
信州大学医学部附属病院 41.1% 90 37 18
愛知医科大学附属病院 41.7% 60 25 25
山口大学医学部附属病院 44.6% 83 37 28
産業医科大学病院 45.0% 40 18 14
山形大学医学部附属病院 46.0% 50 23 23
鳥取大学医学部附属病院 46.0% 50 23 16
大分大学医学部附属病院 48.3% 60 29 27
日本医科大学千葉北総病院 50.0% 20 10 9
日本医科大学付属第二病院 50.0% 20 10 8
金沢大学医学部附属病院 50.0% 40 20 7
福井大学医学部附属病院 50.0% 48 24 22


マッチ率の高い大学病院
自分の大学出身者よりも、他大学から多く流入しています。
研修医確保数(マッチング数)が多い大学は、大都会に存在している傾向が顕著です。
これ以外にも東大や医科歯科大などは、他に大学院入学者を多数確保しており、この表以上の大学間格差がみられます。
また、大学院定員確保のため(大学院存続のため)に、研修医(入局者)すべてを強制的に大学院へ入学させる大学も多数あるそうです。本末転倒もいいところです。本来、研究したい者だけが授業料を払って行くべきところです。こんな愚策を弄すれば、ますます大学離れをまねくでしょう。

名称 マッチ率 募集 マッチ数 自大学出身
自治医科大学附属病院 100.0% 55 55 0
自治医科大学大宮医療センター 100.0% 16 16 0
獨協医科大学越谷病院 100.0% 36 36 30
順天堂大学附属順天堂医院 100.0% 70 70 22
順天堂大学附属順天堂浦安病院 100.0% 35 35 21
東京大学医学部附属病院 100.0% 140 140 47
東京医科歯科大学医学部附属病院 100.0% 114 114 49
東邦大学医療センター大森病院 100.0% 40 40 33
東邦大学医療センター大橋病院 100.0% 20 20 15
慶應義塾大学病院 100.0% 75 75 31
東京女子医科大学病院 100.0% 90 90 58
帝京大学医学部附属溝口病院 100.0% 20 20 18
横浜市立大学附属病院 100.0% 46 46 7
横浜市立大学市民総合医療センター 100.0% 46 46 16
名古屋市立大学病院 100.0% 25 25 12
京都大学医学部附属病院 100.0% 100 100 35
近畿大学医学部堺病院 100.0% 10 10 10
福岡大学病院 100.0% 63 63 54
日本医科大学付属病院 95.0% 40 38 30
鹿児島大学病院 94.3% 70 66 44
東京慈恵会医科大学柏病院 93.3% 30 28 26
聖マリアンナ医科大学病院 93.3% 60 56 51
近畿大学医学部奈良病院 91.7% 12 11 9
大阪大学医学部附属病院 87.8% 90 79 35
東京慈恵会医科大学青戸病院 87.5% 8 7 6
琉球大学医学部附属病院 86.1% 36 31 24
東海大学医学部付属病院 84.7% 72 61 56
神戸大学医学部附属病院 82.5% 80 66 16
長崎大学医学部附属病院 81.1% 90 73 42
大阪市立大学医学部附属病院 81.0% 100 81 25
昭和大学横浜市北部病院 80.0% 25 20 14
東京医科大学病院 80.0% 45 36 31
京都府立医科大学附属病院 80.0% 90 72 26





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